無想庵コラムCOLUMN

茶席の立ち居振る舞い

茶席の立ち居振る舞い

1. 美しい座り方、立ち方、歩き方

お茶とか茶道と聞くと最初に思い浮かぶのが、畳の上に正座するイメージでしょうか?

普段正座をする機会がめっきり減った昨今、正座で座っているだけですぐに足がしびれてしまいますね。このことが日本人を茶道から遠ざけてしまっている一因かも知れません。

どれくらいの時間、正座で座っていられるかは人ぞれぞれで、慣れてくると長時間座っても平気になってきますが、やはり畳の部屋での正式な座り方は正座です。日本人としてキチンと正座できることは基本的な素養でもあると思います。そもそも正しい座り方を知らないとすぐにしびれてしまいますし、座り姿もあまり美しいとは言いにくいと思います。

ではさっそく座り方からご説明していきたいと思います。

  1. 着物でも洋服でも同じですが、両足を揃えたまま、両ひざを外側に広げながら腰を下ろします。広げる目安は男性がこぶし2個分、女性は1個分です。この時両手は指先をを揃えて太もものあたりに添えています。
  2. そのまま腰を降ろしていき、ひざを畳につけて座ります。座り終わったら両手は右手を上にして重ねて揃えます。ひざは座るときと同じ間隔を開けておきます。
  3. ひざをくっつけて座ると安定が悪く、余計に無駄な力がかかって早く痺れてしまいます。足の親指は少し重ねる感じが良いでしょう。
  4. 猫背になったり、背中を反り過ぎたりは美しくないので、あごは少し引き、背筋はまっすぐに伸ばします。

今まで意識してこなかった分、なかなか自然には綺麗に座れないと思いますが、無想庵の研修ではまず最初に練習していただいております。

次に立ち方です。右ひざから立つときと左ひざから立つときの2種類がありますが、どちらの場合もポイントは必ず両足のかかとを揃えて、同時に爪立て(き座といいます)どちらかのひざを立ててから立ち上がります。

右あしから立ちあがる場合(左足はその逆です)

  1. 両足を同時に爪立て(き座する)ます。この時の両手は両ひざに添えます。
  2. 右ひざを半分立て、そのまま右足を半足分前に出すようにします。
  3. そのまま立ち上がります。右足が左足より半足分前にずれていますが両足は前から見ると揃っています。
  4. この時両手は、男性は指を揃えて親指と人差指で軽く円を作り自然に(大体ズボンのポケット辺りの位置) 降ろしておきます。 女性は指を揃えて伸ばし、自然に下に降ろしておきます。

歩き方

歩くときの注意点は3点だけ。

  1. がに股や内股にならない。つま先はまっすぐ前に向ける。
  2. 畳のへりや敷き合わせ(別ページで単語の説明あります)、敷居は踏まない。
  3. 裏千家では畳をまたぐ時に上座に向かうときは右足から、逆に下座に向かうときは左足からまたいで行ってくださいと指導されています。

ただ足にばかり注意が取られてしまうと、どうしてもつい下を向いてしまいがちですね。傍から見ても首が折れ曲がり、美しい姿勢とはいえません。目線は足元ではなく、少し斜め前方に目を配るようにすれば良いのではないでしょうか。

2.お辞儀の仕方、タイミング

茶道では、お辞儀の仕方にも真・行・草の3つがあります。松竹梅みたいなものと思ってください。点前にも同じく真・行・草という格があるので、言葉と概念だけはなんとなく覚えてください。

ニュアンスとして真が丁寧、行が真と草の中間、草が簡略といった感じです。

お辞儀で一番大事なことは、相手を敬い、感謝する心が感じられるようにすることです。背中が丸まらないよう普段から気をつけて、背筋をピンと伸ばすことを意識しましょう。

真のお辞儀

もっとも正式なお辞儀です。床を拝見のときの一礼や主客総礼するとき、お菓子やお茶を頂くときに亭主に対して客がお礼をいうときに使われます。

  1. ひざの両手は指を揃えて、滑らせるように指先から静かに畳に降ろします。(ここは全て共通)
  2. 掌を全部畳につけます。目線は指先10センチくらい。
  3. 背筋を伸ばしたまま、腰から折り曲げる感じ頭を下げる。この時、頭だけを下げているように見えたり、頭が地面に着きそうなほど頭を下げすぎない。両ひじを60度くらい外側に曲げるくらいが目安です。

行のお辞儀

真より少し簡略なお辞儀です。客が行のお辞儀をすることはほとんどないと思って頂いて結構です。

  1. 真と1と同じ
  2. 畳に付くのは指先から第二関節くらいまで。力が入れすぎて指が反らないように美しく。頭の下げる(上半身を倒す)角度は真のときより、若干浅めです。手がついているのでおのずと角度は決まります。

草のお辞儀

行よりさらに簡略なお辞儀です。 指先だけ畳についています。
お菓子やお茶を頂く際の次礼(つぎれい)など、連客(れんきゃく)同士の挨拶のときに使います。

  1. 真と1と同じ
  2. 畳に付くのは指先だけ。頭の下げる角度は行のときよりさらに浅めです。
  3. 浅めでも腰からの意識は忘れずに、頭だけを少し曲げるのは間違いです。

どのお辞儀も、頭と背筋は一直線だということはお忘れなく。ひじを少し外側に曲げる感じでやると見た目も綺麗でお辞儀もしやすいです。

お辞儀をするタイミング

挨拶するときとお礼するときにお辞儀をします。真行草の使い分けは前出のとおり。

ちなみに床を拝見する前に一礼しますがこれは軸の作者に対しての敬意を表すお辞儀で、拝見している際に両手をついているのはお辞儀ではありません。物に対してお辞儀するのは変ですから。

最初のうちは周りを良く見て、皆さんがするときに遅れずにするように注意しましょう。
客として行く時は 次の3つだけ。相手のしている通りにすれば良く、あまり難しく考えなくて大丈夫です。相手が丁寧にお辞儀しているのにぞんざいな態度は取らないと思います。

  1. 亭主が挨拶すれば返礼する
  2. お菓子やお茶を出されたらお礼する
  3. お隣同士で挨拶する

他を思いやる心で接すれば、おのずと相手に敬意を払い、感謝の気持ちを持って行動することができようになります。そうなれば自然と心のこもった素晴らしいお辞儀ができます。

状況に合わせて3つのお辞儀を使い分けることを覚えようとすると難しいですが、一般的なビジネスマナーの基準でどの程度のお辞儀をすれば良いかを考えて結構かと思います。

コメントを残す

記事に関するご質問やご意見などありましたら下記のフォームよりお気軽に投稿ください。