お茶会(二)
お茶事
1.お茶事とは何か
亭主が特定の人をお客様として予めお招きして開催されます。フルコースで四時間かけて行われ、懐石を食べて主菓子を頂き、濃茶を飲みます。後炭の後、干菓子が出され薄茶を頂くのが代表的な流れです。現在、頻繁に開催されているお茶会(いわゆる大寄せの茶会)は不特定多数の人が当日参加することが出来ますが、お茶事では亭主が1ヶ月も前に客の顔ぶれを決め、招待状を出します。お客様の方もその返事をちゃんと出さないといけないのです。これだけで大変さがわかります。
大寄せの茶会ではほとんどが薄茶のみですし、そもそも一席の人数が20~30人と大人数なのに対し、お茶事ではお客様は正客を含めて4~5名が限度です。理由は懐石をお出しする関係で亭主一人では少人数のお客様でなければ、おもてなしができないからです。(懐石の内容や流れについてはまた別項で)
茶事のメインイベントは何かわかりますか?
懐石料理ではなく、濃茶です。
私たち茶人が日々稽古をするのも最終的にはこの茶事に、亭主として客として臨み、主客共に相手を思いやり、その茶事を楽しく執り行うことができる人間になるために修行しているのです。
このことを「一座建立(いちざこんりゅう)」 といいます。
2.茶事に招かれた時の心得
茶事に招かれるということは、亭主にとってかけがえのない人ということです。事前に案内状が届きます。茶事の趣旨・場所・時間が書かれており、連客(れんきゃく)の名も添えられています。
ですので、なるべく早く返信をします。また前日には前礼と言って招かれた客はの亭主を訪問し、茶事に招かれたことへの礼を述べます。これはお礼の気持ちを伝えるのと同時に、必ず行きますよという意思表示でもあります。準備に忙しい亭主に迷惑がかからないよう、この日の挨拶は玄関先で手短に済ませるようにします。
男女とも、茶事には和服がふさわしいです。男性は紋付の着物に 袴(はかま)。お茶名をお持ちなら袴は履かず、十徳(じっとく)を着用。 女性の場合は訪問着、付け下げなどがありますが、茶事の趣旨に従えばよいでしょう。洋服の場合も派手なものは避け、相手に失礼にあたらないように心がけます。白靴下を準備し、席に入るときに履き替えます。香水などのにおいのきついものは茶の香りの邪魔をしますのでつけません。
当日案内状に書かれている時間の30分前くらいを目安に伺います。早すぎると準備ができていない場合があり、遅くなると連客を待たせ、茶をいただく気分を害することになりますので注意します。
持ち物とふるまい
絶対に必要なのは、扇子、懐紙、出し帛紗、楊枝(ようじ/菓子切り)です。
濃茶席で必要になるのが 出し帛紗 です。(裏千家では古帛紗 (こぶくさ)という帛紗 より小さいものを使います)これはお点前で使う 帛紗 とはちょっと違い、大きさは同じですが、名物裂(めいぶつぎれ)など さまざまな模様や織り方で、絹布のものが一般的です。客は 茶碗を 自分の出し帛紗を二つ折りの状態でその上にのせて使います。また拝見のときに茶入や棗(なつめ)などの下に敷きます。
茶席でのふるまいの基本として、指輪や時計などは寄付待合ではずしておきます。通信機器も同様です。
- 大寄せのお茶会とは違い、必ず入口で座り、扇子を前に一礼して膝行(しっこう)しながら入室します。
- 入席したら、床の間の前に進んで、掛け軸、花、花生、香合などを拝見します。
- 続いて点前座(亭主が点前をする場所)に進み、点前座の飾りを拝見します。
- 連客が拝見しているとき正客は仮座(かりざ)をして待ち、お詰め(末客)の拝見が終わるころに客座につきます。
3.茶事には趣向がある
茶会を開くというのは、何かテーマがあってするわけです。茶道ではそれを趣向と言います。
趣向(しゅこう)とは?
茶会を行う際の全体的なテーマを「趣向」と言います。
季節を主題としたものが多いですが、時には祝い、追悼、宗教的意味あいを目的としても行われます。
亭主はその趣向に即して茶会のスタイルや場所、招くお客様、道具を決めます。
道具組み(どうぐぐみ)とは?
どの道具をどういった組み合わせで使うか、ということを「道具組み」と言います。
趣向の大部分は道具に現れます。道具にはそれぞれ季節や格といったものが備わっています。
道具の季節感は、素材や絵柄あるいはしきたりによって決まります。
格は、そのものの由来や型などから決まってきます。季節感を揃えること、道具同士の格を乱さずに趣向に沿った格調を与えられることが道具組みのセンスになります。
たとえば、茶事をするなら濃茶席は厳格かつ重厚に、薄茶席はもう少しカジュアルにしても良いかもしれません。他にも初釜(はつがま)や開炉(かいろ)といっためでたい席は格の高い席にした方が良いでしょうし、反対に親しい人と楽しい時間を過ごしたいと開く茶会などはあまり改まった席にする必要はないと思います。
会記(かいき)とは?
その日の茶会で使用する道具組みを記したものを「会記」と言います。
多くの場合、待合の床に会記が置かれ、席入りの前に知らされます。
客はこの会記を読んでその道具の内容や形、銘、由来からその日の趣向と亭主の意向を推測し、これから登場するであろう道具に思いを馳せるのです。
また、この会記と同じような意味合いでその日使用する道具の箱の蓋が待合に置かれている場合もあります。これを箱書きと言いますが、これには道具の銘や作者などが書かれています。
箱書きは書いた人がその道具を保証するという意味があり、誰が書いたかも重要な要素になります。お家元が箱書きされることが多いと思います。お寺の住職さんにお願いする方もいらっしゃります。
お茶会(三)で茶事七式と茶事の流れを説明します。