無想庵コラムCOLUMN

紅炉一点雪 二月の掛け物

紅炉一点雪 二月の掛け物

紅炉一点雪(こうろ いってんのゆき)

お茶席にはその時期に相応しい禅語の 掛け物(掛軸)を、荘(かざ)りたいものですね。

経済的にたくさんの掛軸を買い揃えるのは難しいですが、毎月一つずつ『今月の禅語』として、ご紹介していきたいと思います。

この言葉は『碧巌録(へきがんろく)』という中国の古い書物に書かれている言葉です。

オリジナルは7語で、【紅炉上如一点雪(こうろじょう いってんのゆきのごとし)】で、省略されて書かれていることが多いとのことです。

意味は、真っ赤に燃え盛った炉の上に一片の雪がひらひら舞い落ちてくる。雪は一瞬のうちに溶け、その風情がはかなく感じられる。私たちの命もまたこの雪のように、永遠に続く時間の中では一瞬でしかなく、はかないものだということです。

しかし私たちは、はかない一瞬の存在ではあるけれど、自己なくしてこの世の全てのものの存在も意味がありません。私たちが一点の雪であるならば赤く燃え上がる炉はこの世を現しているのかもしれませんね。

そういう意味からすると、この句の主眼は一点雪にあるということです。

この句を読んだだけの寒い雪の日に、しんと冷えた茶室の中で、釜が湯気を出し、その下には炭が真っ赤に燃えている。そこにひらひらと雪が落ちてきて一瞬で消えてしまう。そんな光景が目に浮かびますよね。

たった五文字でその情景を表現してしまうとは、すごいと思ってしまいます。

有馬頼底著『茶席の禅語ハンドブック』より一部抜粋

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