無想庵コラムCOLUMN

古筆って何?

古筆って何?

古筆(こひつ)とは文字通り昔の人(古人)が書いたものです。ですので、昔に書かれたものは全て古筆に当たりますが、専門的には奈良時代から鎌倉時代までに書かれた優れた筆跡を指し、かな書きの和歌などのことを言うのが多いです。

茶会の掛物にも使われるので、お茶会やお稽古などで拝見したことがあると思います。最初に使い出しのはあの有名な竹野紹鴎とする言い伝えがあります。古筆の代表的なものが、藤原定家筆の小倉色紙です。通称、定家色紙です。この和歌の掛物は公家の間で流行したのですが、利休以後の江戸時代に入ってからですので、利休の時代ではそんなに茶席に掛かって無かったのではないかと思います。更級日記や源氏物語、古今和歌集などの写し?などが茶会で飾られたという記録も残っています。

平和な江戸時代では、大名にとって兵力よりも文化的な教養が必要とされた時代ですので、大名たちにもこの和歌を中心とした古筆が使われ収集の対象にもなりました。この頃より銘でも歌銘(うためい)というカテゴリー?が出来たと思われます。現代人の私の感覚では歌なんていう長い名前を付けるのは訳わからん!という感じですが、確かに和歌は文化的教養そのものでしょうから茶杓や茶碗などに銘として付けられるのも何となく理解出来ます。

大名の茶会にお呼ばれした豪商たちもその影響を受け、古筆を収集したことが知られています。鴻池家は「熊野懐紙」など有名な古筆を個人所有していました。

古筆はオリジナル物はやはり少なく、能書家という書のスペシャリストが和歌を描いた色紙や新作の和歌を描いた懐紙、古い和歌集の一部を使う古筆切などが中心です。今の様に由緒ある古筆や掛物が大変高価になったのも大正時代に没落した旧家が家宝の美術工芸品を売りに出し、事業で成功を収めた事業家(近代数寄者)と言われる人々が競って買い求めたのが、その始まりのような気がします。現代でも大変有名な茶会、大師会(だいしかい)も益田鈍翁(ますだどんおう)が弘法大使空海の筆である古筆を入手し、それを披露するために毎年開いた茶会なのです。今も招待客が限定されていますし、そんな超貴重な掛物や道具が見られるとは限りませんが、それでも良いお道具に出会えるということで大変人気のお茶会です。

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