鶯声有好音 四月の掛け物
鶯声有好音(おうせいは こういんをゆうす)
ウグイスの鳴き声は、耳に心地良い音色だな~。春の到来を喜ぶ句ですね。出典を探したのですが、見つからず禅語の本にも見つけられなかったです。禅語ではなく和漢朗詠集とか万葉集などからの引用かと思い、検索をかけても出てこないので、現時点では不明とさせていただきます。
ただ、この一行書は春から初夏にかけて、茶席で見かけるお軸です。お稽古時にもウグイスがさえずるこの季節に掛かっており、このお軸を見るともう春も本格的で、もうすぐ夏が来るな~と季節を感じさせてくれます。私自身大変好きな一行書なのですが、写真が見当たらず皆様にお見せできないのが残念です。
そこで、今回は禅語的解釈とか出来ないので、ウグイスのことを調べてみました。あまり野鳥に詳しくないので私自身は何も語れないですが、平群庵さんのサイトに鶯のことが詳しく書かれていましたので、参照しながらご紹介したいと思います。
よく「梅に鶯(うぐいす)」という言葉を聞くと思いますが、平群庵さんによると、それは人間が勝手に作った組み合わせであって、ウグイスが梅の花を好むとか、梅がウグイスを必要としているとかいう話では無いそうです。梅は大陸から日本に持ち込まれた樹木だそうで、その以前からウグイスは日本に棲息していたそうです。ウグイスは日本の固有種だったんですね。中国の漢詩などにも登場するので中国からやって来たのかと思っていました。さらに「ほ~ほけきょ」と鳴くのはオスだけで、(これは知ってました…)春から秋近くまで鳴くのだそうです。夏以降は「 チャッチャッ」とか「ジャッジャッ」と聞こえるそうで、スズメの鳴き声と舌打ちを混ぜたような音 なんだそうです。私など知らなかったので、仮に秋にウグイスの鳴き声を聞いていたとしても何かわからなかったです。
右の写真でのように、意外に地味な鳥ですよね?もっと緑鮮やかな羽の色だと思い込んでいました。多分ウグイスのイラストとか商品の色なんかでイメージが刷り込まれていたのでしょう。
ウグイスって考えたらちょっと変わった名前ですよね?名前の由来も平群庵さんのサイトに書かれているので、簡単にご紹介させていただきます。
ウグイスはその鳴き声から名づけられたというのが定説だそうです。
私達が今日<ホーホケキョ>と聞いている鳴き声は古代人には<ウーウグピ> と聞こえたらしく、ウグイスの<ス>は鳥を表す接尾でカラス、ホトトギスなども鳴き声プラス<ス>として、当時は名前が付けられていたようです。
また、万葉仮名が出来る前から鶯という字はウグイスに対して使われていたとのことです。そもそも万葉仮名ができる前、日本人は中国語の理解のために漢字を学んでいたので、まずは漢文を日本語の意味に置き換える(翻訳する)ことが必要でした。つまり、漢文の中に「鶯」の字が出てきたらともかく日本語をあてる必要がありました。 中国の書の中に「鶯」という字出て来たとき、「鶯」とは何かという日本人に対して、『「鶯」は日本にはいない鳥なので(日本のウグイスと中国の鶯という鳥は似てるけど違うということでしょう)「オウ」としか言いようがありません。しかし、雰囲気としてはさしずめ、「うぐひす」あたりが近いのではないでしょうか?』『それでは「鶯」の字が出てきたら暫定的に「うぐひす(宇具比須)」と訳しましょう』
このような暫定から始まって、それよりも良い案がなければ時間と共に確定したのではないかということです。
日本のウグイスに漢字の「鶯」を当てたのではなく、中国語としての漢文の中に登場する「鶯」の字をウグイスの意味に置き換え、文章全体を理解しようとしたということです。 漢文時代に日本のウグイスに鶯の字を当てる習慣が既に出来たと考えられています。 言葉や字ってそんな感じで決まっていくんでしょうね。時代と共に言葉やその意味が変わるのは今も昔も必然ということでしょうか。