無想庵コラムCOLUMN

看脚下 十一月の掛け物

看脚下 十一月の掛け物

看脚下(かんきゃっか)

今回は今までで一番分かり易い禅語ではないでしょうか?意味は文字通り、「脚下を看よ」です。つまり足元をよく見なさいということですね。

出典は今までも度々登場してきた『碧巌録』です。この碧巌録は圜悟克勤(えんごこくごん) という偉い禅僧の語録をまとめたもので、没後、弟子たちがまとめた二十巻にも及ぶ『圜悟仏果禅師語録』の略称です。去年のこのコラムで取り上げた「日日是好日」や「山花開似錦」もこの書からの出典でした。この碧巌録は茶席の禅語(墨蹟(ぼくせき)といいます)として一行書の出典元になっている、名前くらいは憶えておきたい書物です。

また、茶席で墨蹟(一行書など禅僧が書いた書)をかけるようになったのも、村田珠光(じゅこう)という千利休の二世代前、わび茶の創始者と言われる人がこの 圜悟克勤 の墨蹟を掛けたのが始まりとされています。『流れ圜悟 』と呼ばれるもので国宝です。

さて、看脚下のエピソードですが、臨済宗(禅宗)の中興の祖である法演禅師が三人の弟子を連れて寺に帰る夜道に、手にしていた灯火が消えてしまいました。辺りは真っ暗です。そこで法演禅師は弟子たちに「自分の考えを述べよ」と問答を掛けました。暗い夜道を人生にたとえ、その人生を照らすものは何かと問い掛けたわけです。三人目に 圜悟克勤 が 「看脚下」と答えました。一見、暗い夜道だから足元をよく見るのは当たり前ですが、人生においても妄想や夢想ばかりしていてはダメで足元を固めながら一歩ずつ前に進むというのは真理の一つですね。

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