無想庵コラムCOLUMN

山桜 四月の銘

山桜 四月の銘

山桜(やまざくら)

令和5年の今年、大阪では3月の最終週から4月の頭にかけて、桜が満開です。近くの公園や堤防沿いなど、多さんの桜の木が立ち並び満開です。綺麗な桜の木の下で、野点も乙かも知れませんね。

ヤマザクラは日本の固有種で、古くからあるのできっと利休の頃は桜といえばこの山桜だったと思われます。一方、山地に自生する野生のサクラのことをまとめてヤマザクラと呼んでいるので、正確にはどちらを指すのか難しいところです。

4月に花期を迎えるヤマザクラは、樹高が20メートルを超えることもあるそうで、サクラの仲間の中では高木に分類されます。花は5枚花弁で一重咲きの淡いピンクの花を咲かせています。種類としての山桜で有名な品種としては、カスミザクラ、オオヤマザクラ、オオシマザクラが代表格でしょう。多分皆さんも名前に聞き覚えがあるのではないでしょうか?

お茶の世界では、この『山桜』という言葉を銘をして数多く使われていて、茶碗や茶入れ、棗など様々な道具に銘が付けられています。ですが、何と言っても美術館に所蔵されるほど 有名な茶入は別格です。

右の写真が、その有名な瀬戸肩衝茶入『山桜』 です。MOA美術館に所蔵されています。 桃山時代(16世紀)に焼かれたもので、高さ8.8㎝ 口径3.3㎝  胴径6.8㎝ 底径5.1㎝ だそうです。私も現物を見に行きたいのですが、熱海に行く暇が無く、まだ拝見したことはありません。なので、ネットで調べたことをついでに記載させていただきます。

この茶入は、鉄釉が素地の赤色と融和して渋紙のような色調に見えるので、俗に渋紙手と呼ばれてばれているそうです。その釉薬の焼き上がりが、華やかなうちにも侘びた感じであるところから、山桜の銘がつけられたと伝えられています。

素地は卵殻色のざんぐりとした土で、大小さまざまの砂を噛(か)み、作りは厚く重々しい感じがするとのこと。写真からも何となく感じが伝わります。総体に渋紙色に釉薬がかかり、半面は光沢があり、半面は釉かせがある。裾以下は赤みを帯びた素地を見せ、底回りは箆で面取りをしている。

小堀遠州が名物とした、いわゆる「中興名物」で、もとは三井家、その後大阪の藤田家に伝わり、藤田彦三郎氏所蔵の頃『大正名器鑑』に記載されたそうです。 藤田美術館ではなくなんでMOA美術館なのか不明?大阪にあったら見に行けるのに…。

ちょうど今の時期に使うお道具には、ぴったりの銘でしょう。桜皮細工の茶器に付けても面白いですし、もちろん茶碗や茶杓にもこの銘は付けやすいかと思います。その銘を付けた理由が所有者にしっかりあればOKだと思います。

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