おぼろ饅頭 四月のお菓子
おぼろ饅頭(まんじゅう)
おぼろ饅頭ってちょっと変わった名前ですね。表千家さんでは 利休忌に利休居士にお供えしている、黄色のおぼろ饅頭があるようです。(裏千家では聞いたことが私はありません。)
茶の湯に用いられる主菓子の多くは薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)で、これは通常、山芋を加えて風味と柔らかな質感を出していますが、このおぼろ饅頭は、ふくらし粉を入れて柔らかさを出しています。 蒸し立ての時は、少し厚みのある皮の外側を薄皮が覆っています。この薄皮は非常に剥がれやすく、少しでもくっつくと見苦しくなってしまいます。そこで、外の薄皮を丹念に取り去ったのが、このおぼろ饅頭です。手間のかかっている分、中の餡 (あん) がうっすらと見えて、 独特の趣のある饅頭です。
このことから、おぼろ饅頭の由来は次のように言われています。電気のない昔の茶会は夜には蝋燭を燈して行われていました。蠟燭の光は弱いので、うっすら、ぼんやり浮かびあがる情景はまさに朧(おぼろ)ですよね。中の餡がうっすら朧に見える事から命名されたということです。
御所出入りの菓子商ではなく、一般の餅菓子屋でもみられる饅頭は、 京都では、(今は聞かないですが)正月や入学式に生徒に配られたそうです。
話は戻りますが、利休居士の祥月命日は旧暦の2月28日です。明治以降、太陰暦(旧暦)が廃止され、太陽暦に統一されたため、現在ではちょうど1ヶ月ずらして行われています。利休忌は1ヶ月遅く3月におこなわれます。
表千家さんでは利休堂(祖堂)の利休像に、精進料理とお茶湯(ちゃとう)が供え、菩提寺の大徳寺聚光院からお参りをいただているようです。この時のお供えの菓子がおぼろ饅頭です。