南風 七月の銘
南風(はえ)
南風と書いて「はえ」と読みます。最初、先生に教わった時、虫のハエが頭に浮かび、南風のことをそう呼ぶとは全く分かりませんでした。西日本では古くから、南方より吹く湿った風のことを「南風(はえ)」と呼んでいたそうです。もともとは漁師さんたちが使っていた言葉だといいます。
因みに、東日本では、 南風がとくに強いときは 「大南風(おおみなみ)」と呼ぶそうです。 日本では夏の季節風は南風で、台風のような熱帯低気圧を伴われる場合は南風の暴風となるからです。語感でどんなものか伝わって来ますね。 さて、漁師の言葉と言いましたが、強い南風は、不漁となるので嫌がられました。
梅雨の初めに黒い雨雲の下を吹く南風を「黒南風(くろはえ)」といい、梅雨が明けて白い巻雲や巻層雲が空に浮く頃、そよそよ吹く南風を「白南風(しろはえ・しらはえ)」というそうです。日本人はどうして、雲の色で「黒」とか「白」と、風を名付けたんでしょうね?感性でしょうか?
どちらの南風も、夏の季語。これから雨や風のおかげで仕事に出られなかったり生活がおびやかされたりするかも…というどんよりした暗さを「黒」、太陽の光が戻り活動的な夏がはじまる明るさを「白」…そんなふうに、表現したのかもしれませんね。
「南風」の類義語としては、季節風(きせつふう)、薫風(くんぷう)、夏風(なつかぜ)、モンスーンなど沢山あります。 『風の名前』(高橋順子)に拠ると日本には、少なくとも二千以上もの風の呼び名があるそうです。
茶道で道具の銘に使われる時もありますし、水羊羹をベースにした主菓子に名付けられているようです。お道具に銘を付ける時はそれこそ、一生変更できないのでお道具からインスピレーションを受けない限り、中々「はえ」とは付けにくいというか名付けた理由の説明が難しいですが、こちらでイメージしたものを作って頂く主菓子の銘なら、イメージもしやすいので夏の茶席に使える銘だと思います。