大山蓮華 六月の茶花
大山蓮華(おおやまれんげ)
大山蓮華は、モクレン科モクレン属に分類される落葉する低木です。 関東北部以西の標高1000mを超える山地に自生しています。 日本だけでなく、中国の東南部まで広く分布しています。和名の由来は、奈良県の大山に群生地があり、大山にハスの花に似た花を咲かせるということから名付けられたようです。 別名は「ミヤマレンゲ(深山蓮華)」。純白でややうつむき加減に花を開く。その清楚で気品あふれる花姿から〝森の貴婦人〟と称されています。 利休に愛された〝7選花〟の1つ でのです。
花期はちょうど今の季節、5から7月の初夏に咲きます。枝先に直径 5–8 cm の白い花が下向きや横向きに咲くことが多いです。花の寿命は4、5日程度。茶花は一日で閉じる花が多いので、床に荘っておくにはちょっと便利です。(手入れは毎日)
花被片(花びら)は白色で、9から12枚付いています。細かいことを言うと、3枚ずつ輪生しています。雄しべは、らせん状についていて、花糸と葯隔(中の中心部)は淡赤色、葯は淡黄緑色から白色です。種類によっては違うみたいで赤紫色もあるようです。
日本では古くから、初夏に咲く清楚な花を観賞するため、神社仏閣や庭園に類種が植栽されていました。日本特産というわけではないようで、朝鮮半島や中国の東北部や中南部にも分布しています。
「オオヤマ」とは「近畿の屋根」と称される奈良県の大峰山系を意味していて、同地に自生が多いことや、花の形が蓮華(=ハス)に似ていることからオオヤマレンゲと命名されたと言われています。命名の起源となる大峰山系の自生地は昭和3年に史跡名勝天然記念物に指定されたそうです。
オオヤマレンゲは葉が展開した後に開花します。先ほども書いた通り、開花は5~7月です。枝先に長い柄を出し、直径8~10センチ弱の白い花が下向きや横向きに咲きます。花弁は9枚あるように見えますが、実は外側にある大きな3枚は花弁ではなく「萼片」というものだそうです。萼片 (がくへん)とは、花の最外輪に位置する、花葉です。因みに萼片のまとまりを萼 (がく) といいます。
花の内側には多数の雌しべと雄しべがあり、葯(=雄しべの先端にある袋)の色や濃淡は品種や個体によって違うようです。日本に自生するのは葯が黄色いものが多いのですが、 近縁種に朝鮮半島や中国原産の「オオバオオヤマレンゲ」があります。中国では「天女花」と呼ばれており、 葯の部分が紅いので、見分けはすぐにつきます。 江戸時代以前には渡来してきたらしい のですが、最近では、庭植えや茶花によく使われています。花に甘い香りがあるため茶花としては好みが分かれるところかも知れません。個人的にはどちらの品種でも、「オオヤマレンゲ」は蕾だけでも映えるし、2から3日、花がもってくれるので重宝しております。
さて、日本古来のオオヤマレンゲは古くから茶花として珍重されていたようで、とりわけ千利休はこの花を愛して、よく茶花として用いたそうです。〝利休7選花〟の中に、シロワビスケやナツツバキ、ヤマボウシなどとともに選ばれています。
ただし、オオヤマレンゲはもともと高所に自生している品種で、平地の庭園では栽培がなかなか難しいはずですよね?そのため、茶花として用いられてきたのは主にオオバオオヤマレンゲではないかともいわれています。
残念なことに、近年ではこのオオヤマレンゲは絶滅のピンチに立たされているそうです。原因はニホンジカによる食害だそうです。そのため奈良県では環境省とともに自生地をネットの柵で囲むなど保全対策に励んでいるとのこと。奈良県のほかにも 埼玉 、静岡、石川、島根、山口、福岡、鹿児島の各県が絶滅危惧Ⅰ類(絶滅寸前種)に指定しました。
茶席では、本文中にも記載した通り、蕾で竹の花入に一輪、指して荘るととてもいい感じになります。日を追うことに変化して楽しいですし。