無想庵コラムCOLUMN

籠松明 三月の銘

籠松明 三月の銘

籠松明(かごたいまつ)

奈良に春を呼ぶ東大寺二月堂の修二会(しゅにえ)は、天平勝宝4年(752)、東大寺開山良弁僧正の高弟、実忠和尚が創始されました。以来、令和6年(2024)には1273回を数えています。修二会の正式名称は「十一面悔過(じゅういちめんけか)法要」と言いまして、 国家や万民のためになされる宗教行事でした。古代日本では、天災や疫病、反乱は国家の病気と考えられ、そうした病気を取り除いて、鎮護国家、天下泰安、風雨順時、五穀豊穣、万民快楽など、人々の幸福を願う行事が必要だったわけです。 因みに十一面悔過とは、われわれが日常に犯しているさまざまな過ちを、二月堂の本尊である十一面観世音菩薩の宝前で、懺悔することを意味するそうです。

今年で1273回という東大寺の長い歴史にあって、修二会は「不退の行法」として、1250有余年もの間一度も絶えることなく、連綿と今日に至るまで引き継がれてきています。 その間二度もその大伽藍の大半が失われてしまった時ですら続けられたそうです。凄いですね! この法会は、現在では3月1日より2週間にわたって行われていますが、もとは旧暦の2月1日から行われていたらしく、二月に修する法会という意味をこめて「修二会(しゅにえ)」と呼ばれるようになりました。また二月堂の名もこのことに由来しているそうです。

行中の3月12日深夜(13日の深夜1時半頃)には、有名な「お水取り」といって、若狭井(わかさい)という井戸から観音さまにお供えする「お香水(おこうずい)」を汲み上げる儀式が行われています。そしてこれも有名ですが、この行を勤める練行衆(れんぎょうしゅう)の道明かりとして、夜毎、大きな松明(たいまつ)に火がともされ 、二月堂の舞台で松明を振って火の粉を散らす、皆さんご存じの「お松明(籠松明)」 が行われます。この様なことから「修二会」の代名詞として「お水取り」とか「お松明」とも呼ばれるようになりました。

12月16日(良弁僧正の命日)の朝、翌年の修二会を勤める練行衆と呼ばれる11名の僧侶が発表され、明けて2月20日より別火(べっか)と呼ばれる前行が始まり、3月1日からの本行に備えます。そして3月1日から14日まで、二七ヶ日夜(二週間)の間、二月堂において修二会の本行が勤められるのです。

コメントを残す

記事に関するご質問やご意見などありましたら下記のフォームよりお気軽に投稿ください。