糊こぼし 四月の茶花
糊こぼし(椿)
『糊こぼし』って変わった名前ですよね。これは椿の一種で 花色は紅色地で白い斑(まだら)が入っています。その白い斑模様が糊をこぼしたようなので、この名前が付いています。
花の形は一重筒が多く、大きさが5cm~7cmくらいのいわゆる中輪です。
奈良の三名椿の一つとされていて、東大寺開山堂に原木があります。この椿は良弁椿(ろうべんつばき)と呼ばれていて、故に糊こぼしの別名でもあります。
お水取りとして知られる東大寺修二会(しゅにえ)では練行衆自らが作った「糊こぼし椿」の造花が堂内に飾られているそうです。
因みに主菓子でも、同じ『糊こぼし』という銘でありますが、(例えば右の写真→)もちろんこの椿からインスパイアされて作られていると思うのですが、本当の糊こぼしは花弁ごとに色が分かれているわけではありません。製造上の問題でこうなったと思います。なので3月のお水取りの時期になると、お茶席でも主菓子にこの『糊こぼし』がだされます。椿の糊こぼしと東大寺のお水取りの知識を踏まえた上で、会話をされると話も弾み、美味しくいただけると思います。
専門家の話によると、この品種は白斑が多くなると、花形も葉小さくなり、樹勢も弱くなるとのことです。劣勢遺伝というやつでしょうか?表紙の写真も白い部分が多いので糊こぼしとしては小ぶりな方なのかも知れません。(個人的にはそんなに多くの糊こぼしを見ていないので、何が大きくて何が小さいのかよくわかりませんが…)
茶席で使う場合には、椿と枝物の取り合わせが多いと思いますが、四月くらいになると色々な春草花との取り合わせも良いかと思います。例えば山茱萸(さんしゅゆ)と合わせると映えると思います。