花兎 三月の銘
花兎(はなうさぎ)
三月の銘に相応しいものとして、花兎があります。上の写真が花兎という意匠です。写真ではバックが黒ですが、茶道では 花兎金襴(はなうさぎきんらん) という 名物裂を使って仕覆や古帛紗を作ったりしています。茶席の 問答でもよく出てくる名称です。
花兎金襴(はなうさぎきんらん)と称する裂には数種類あり、名称のとおり花と兎を織りあらわしたものです。ほとんどの裂では、花は作土文(つちつくりもん)になっていて、兎は振り向いた形のものが多いです。 作土文とはカマボコの断面図みたいな形です。 兎と花樹を組み合わせた部分は、正方形に近いものであったり色々ですが、その組み合わせた部分が整然と列をなして配されています。地色も縹地や紺地、萌黄地、茶地など種々あり、なかには、作土風ではなく、兎が右前足を上げて草花をくわえているものもあります。植物と動物という、静と動とを組み合わせる文様形式は古くスキタイに発し、中国で好まれたものだそうです。
花兎文は鎌倉時代から室町時代にかけて、禅宗と一緒に伝来しました。つもり茶道と同時期ということで、かなり古いというか歴史ある文様という事になります。また同時に、寺院建築では「瓦燈窓(かとうまど)」と呼ばれる装飾が見られ、やがて茶室にも「火灯口(かとうぐち)」という名で取り入れられます。 これらも中国からの影響を受けたものです。
ウサギはその動きから跳躍、飛躍を表すとされています。 ちょうど今、令和5年はウサギ年ですよね。昔から物事がとんとん拍子に進む縁起の良い柄として愛されてきました。 また、有名な因幡の白兎では大国主命の結婚を導く一節があり、良縁・縁結びの神ともされています。
茶碗や茶杓、茶入などお道具の銘に付けられることは、少ないと思いますが、裂地の名前でもあるし、またお菓子で銘が付けられれることはあるので、銘としてどういう物か理解しておく価値はあると思います。