無想庵コラムCOLUMN

行住坐臥 五月の掛け物

行住坐臥 五月の掛け物

行住坐臥(ぎょうじゅうざが)

行住坐臥とは、「歩く」「止まる」「座る」「寝る」という人間が必ずする動作の事です。そこから転じて、普段の暮らしを意味する言葉となりました。現在ではあまり聞くことのない死語かも知れませんが…。

禅の精神では、日々日常の立ち居振る舞いを重んじます。もちろん、茶道も禅宗と一体ですから、重んじていますよね。お稽古の目的が立ち居振る舞いです。禅僧であれば立ち居振る舞いを正しく出来る事が、仏様の道を歩む上での絶対条件みたいなものだと思いますし、私たちお茶を嗜む者としても立ち居振る舞いが美しくなければ、お点前が出来ようが、お茶の知識があろうが、高価な道具を持っていようが全く無価値な存在になってしまうと思います。

確かに立ち居振る舞いの美しさは、丁寧に心を込めて動作をすれば出来ることなので簡単なように思えますが、案外見せかけだけ整えても何となくそれは伝わってきます。

お点前も、立ち居振る舞いも、それぞれ流派の教えに従った決まった型ではありますが、何年も繰り返し動作を反復することで身体に入って馴染んでくるものです。ベテランドライバーの様に考えなくても流れるように車を運転するが如く、美しい立ち居振る舞いが、茶席だけに限らず、日常生活でも自然に出来れば、窮屈に感じることもなく自然体に居られるようになるのだと感じています。

作法を身に着け、それを超えたところに自由で自分らしい、逆に開放感のある世界が広がっているのではないでしょうか?

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