袴腰餅 十二月のお菓子
袴腰餅(はかまごしもち)
いにしえより、京都の御所では十二月下旬の吉日に煤払いの行事がありました。その時に振舞われていたのが「袴腰」という餅でした。普段は禁裏では男子禁制ですが、煤払いの時だけは男子も禁裏に出入りして大掃除をしていました。この日ばかりは女官たちも袴を付けて働きます。
昔のことですので、電気もないし掃除中なのでロウソクも灯せません。そこで、暗くても人の動きが分かるようにと腰板を目立つようにしていたそうです。腰板とは袴をつけた時に腰辺りに来る台形の板みたいな部分のことです。芯は厚紙です。昔はどうっだったのでしょうねぇ?大きな懐紙を折り曲げていって厚みを出したのではないかと想像します。
公家衆はくちなしの汁で染めた黄色、女官は小豆の汁で染めた赤色、白色は六丁衆と言われる出入りが許された町人を表していました。現在は白色の餅しかありませんが、公家も女官もいない時代になったので白色だけ作っているのでしょうか?不明です。
さて袴腰餅ですが、 台形をした粉なし製の菓子であります。粉なしとは、和菓子の製法の一つで、まず、白こし餡に小麦粉や上新粉を混ぜ合わせ蒸しあげます。そして蒸して熱いうちに砂糖などを混ぜ、固さを調整しながら揉みこなして作られています。
『こなし』も『練りきり』も餡ベースで作られているので、素人目には見分けがつきにくいです。では、具体的にどう違うのでしょうか。まとめると次のようになります。
- つなぎの小麦粉と求肥が大きな違い。
- 小麦粉がつなぎの『こなし』は、むちっとした弾力とややあっさりとした味わいになる。
- 求肥がつなぎの『練りきり』は、柔らかさと粘りがある上品な甘さに仕上がる。
茶の湯専用の菓子ではありませんが、御所出入りの川端道喜(京都の有名老舗和菓子店)さんが事初めの日に御所へ献上した菓子です。 店のサイトによると、 川端道喜は御所の京餅座の統括のみならず、作事奉行を勤めていたそうで、御所の修復に私財を投じた経緯があるそうです。
今ではいろんな店で袴腰餅を作られるようになりました。こう考えると、 菓子は単に茶の湯のものではなく、貴族を含めた生活の伝統の上に成り立っているのが分かりますね。