無想庵コラムCOLUMN

金風 十月の銘

金風 十月の銘

金風(きんぷう)

「金風」とは、古代中国の五行と呼ばれる思想では秋を金で示します。つまり秋の風を指します。 収穫の秋、黄金色にも見える稲穂を思い浮かべると、金風を、秋のみのりの風と言いかえることもできますね。因みに五行説では、宇宙の万物は木・火・土・金・水の五行の相生、相克の力によって生成されると考えられています。

この言葉の出典は、中国の有名な禅僧である雲門が著したとされる、「碧巌録」という禅問答を集めた本に残した言葉です。それは、ある僧が雲門に「樹しぼみ葉が落ちる時、どうでしょうか?」と問いかけた際、雲門が答えたとされる「体露金風(たいろきんぷう)」です。

体露(たいろ)とは、禅語で「全体露現」「赤裸々露堂々のまる出し」という意味だそうです。体露と組み合わせて使われる「体露金風(たいろきんぷう)」は、飾り気のない丸裸の自分と秋風を指す言葉です。つまり、生の全肯定を示し、今を一切受け入れた上での言葉なんですね。

お茶の道具の銘で、付ける時はそんな言葉の意味を踏まえた上で、秋らしい銘として重宝するのではないでしょうか?

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