道具の拝見の仕方(一)点茶道具
お茶席では、お茶事でも大寄せのお茶会でも一服いただいた後に、必ず道具の拝見という所作があります。今回はお茶会で拝見する機会のある。茶碗、薄茶器・棗(なつめ)、茶杓の3つを紹介します。
茶道は、『他』を思いやることが大事と他の記事で何度か書いてきましたが、この『他』には人だけでなく人以外の全ても含まれています。ですから、物を大事に扱うということもその気持ちの表れということになります。もちろん貴重な道具や高価な道具と分っている場合は気をつけると思いますが、普段の稽古のときやたまたま出た茶席でも、大切に扱う気持ちを忘れないでいただきたいと思います。特にもてなす側の亭主から客を見ているとその方の振る舞いで相手がなんとなくわかってしまうものです。
茶碗の拝見の仕方
- お茶を吸い切ったら茶碗の正面を元に戻すため、飲むときの逆回し(反時計回し)を2回して縁外(へりそと)に置きます。
- 低い位置で茶碗の形や印などを拝見します。《テクニック!》足のしびれをここで緩和させるため茶碗をしげしげと眺めている振りをして、腰を少し浮かせます。傍目からはすごく熱心に見入っているように見えます。
- 最後に縁外に返します。
薄茶器・棗(なつめ)の拝見の仕方
薄茶席で使われるのは、ほぼ漆器です。真塗、蒔絵(まきえ)などの技巧や意匠を鑑賞します。
- 縁外において両手をつき、棗全体を眺めます。
- 棗に両手で持ち上げ塗りや意匠を拝見します。この時斜めにしたり、ひっくり返しては絶対にいけません!理由は中に抹茶がまだ入っているので零れ落ちて来ます。抹茶を畳の上に撒き散らしてしまうと畳の目に入り込み、ふき取ることができません。亭主側にかなりの迷惑をかけることになるのです。
- 斜めにしないように蓋をとり、蓋の裏側にある花印(かおう)を拝見します。
- 蓋を右横に置き、中の抹茶の景色を見ます。お点前をされた方が綺麗に抹茶を掬っていたかどうかわかります。
- 蓋を戻してもう一度縁外に置き、両手をついて全体を拝見します。
- 隣の方との中間に、棗を置きます。この時は縁内(へりうち)に置きます。
《テクニック! 》蓋と胴の絵柄を合わせるのが基本ですが、自分が最後の客(詰めといいます)でなければ、合ってなくてもそのまま隣に回します。
茶杓の拝見の仕方
茶杓を拝見する際の注意点はたった一つ。中節(なかぶし)より上を持たないことです。中節とは真ん中ほどにある竹の節ですが、元節の茶杓など真ん中に節がない場合もあります。その時も茶杓の真ん中より上、櫂先(かいさき)側を持たないようにしましょう。
- 縁外に茶杓を置き、両手をついて全体を拝見する。
- 低い位置で両手で茶杓を持ち、細部を見る。手で持つ位置に注意!
- 最後にもう一度 1を繰り返す
どの道具も拝見する際は、お隣に挨拶することをお忘れなく。
左隣の方には「お先に」
そして道具を送るときは必ず右手で相手との中間、縁内に道具を送りましょう。特に棗のときは蓋だけ持ち上げてしまわないように、しっかり胴を持っていることを確認してください。