野分 九月の銘
「のわき」、または「のわけ」と読みます。台風の古称です。二百十日(九月の初旬)の頃、野の草を吹き分ける強い風のことです。台風より野分と呼んだ方が情景がすぐに思い浮かびますね。流石に昔の人は風流ですね。
野分ですが、その起源?は『源氏物語』です。五十四帖の巻名のひとつになっています。
他にも、夏目漱石の小説のタイトルになったり、戦争中は日本海軍の駆逐艦の名前にもなっています。最近?(昭和時代は若い人には生まれる前ですが…)では渡辺淳一のテレビドラマの原作にもなった連載小説のタイトルでも使われています。この語は昔から日本人の好きな言葉のようですね。
今は手紙はめったに書きませんが、「野分の候」と書けばりっぱな秋の初めの時候の挨拶になります。これを文頭に入れれば、「台風が来るのが心配される頃となりましたね」という相手への思いやりが表現できます。 しかも文学的です(笑)