太郎冠者 十二月の茶花
太郎冠者(たろうかじゃ)
「かんじゃ」と読みそうになりますが、「かじゃ」です。別名「有楽(うらく)」、中部地方では「淡侘助(うすわびすけ)」とも言います。別名からも分かるように、侘助系の椿です。侘助系だけで実に27種類(かそれ以上)もの品種があります。去年取り上げた白侘助が白い椿の代表格ですが、この太郎冠者は薄桃色の椿です。
DNA調査によれば、なんと白侘助はこの太郎冠者のDNAを持つ栽培品種だということが分かったそうです。椿は日本の代表的な花の一つですから、江戸時代の頃には多くの品種改良?が行われていたようです。確かに花や葉、開花時期など特徴がそっくりです。色が薄桃色か白色かの違いだけみたいに見えますね。
花としての特徴をまとめると、薄桃色で一重咲きの中輪です。早咲きの品種なので、ちょうど炉開きから年内の時期に咲きます。侘助系の花としては大きめに見えると思います。花弁は5~6枚で、これは侘助系の元になる品種なだけに、他の侘助も花弁数は同じです。椿のイメージとして、沢山のおしべが合着した雄ずい群(筒蕊)が特徴的ですが、太郎冠者は多くの品種の原種だけにイメージ通りの椿です。薄ピンクの椿を見たら、取り合えず太郎冠者ですか?とお聞きすれば、違う品種だったとしても決して不勉強な人間には思われないと思います。そもそも椿を正確に見分けるなんて学者でさえ、大変なことですから。茶人として最低限の教養と言うか知識があれば茶席の会話は楽しめます。
ところで太郎冠者とはちょっと現代人には聞きなれない名前ですね。冠者とは元服した成人のことを言い、太郎はその筆頭。つまり大名家などの家臣、召使などのうち筆頭の者のことですが、現在では多くの場合、狂言の役柄の一つの意味で使われていて、太郎冠者は主人公的な役です。主人や大名などを頓智や機転でやりこめ、時にはやりこめられる明るく、笑いを誘う役柄です。演目によっては次郎冠者、三郎冠者も登場し舞台を盛り上げているようです。余り古典芸能に詳しくないので受け売りです。
椿の太郎冠者も、古典椿の代表的な品種です。入手しやすく育てやすいとのことで庭木に向くそうです。初心者向きということでしょうか?あいにく、自宅には庭がないので、茶室を建てることが出来たら、自分で育てたいと思っている椿です。