数寄屋 十一月の茶花
椿とは
数寄屋は何百種類とある椿の中の一種です。数寄屋ツバキの説明の前に少し、椿いう花について復習したいと思います。
椿は古くから庭木として親しまれている日本を代表する花木のひとつで、野生種としては本州・四国・九州・朝鮮半島南部に分布しています。現在は椿の品種は200以上ありますが、原種は、樹高の高くなるヤブツバキ、本州の日本海側、雪の多く降る地帯に分布する樹高のやや低いユキツバキがそうです。また、ヤブツバキとユキツバキの分布の境界線上の中間地帯にはユキバタツバキというヤブツバキとユキツバキの特徴を併せ持った中間的な存在のツバキが存在し、両者の雑種だと言われています。
ツバキの名前の由来は諸説ありますが、よく言われるものに、光沢のあるツヤツヤした葉っぱの木→ツヤハキが転じたという説があります。 因みにお茶の木も椿の一種ですので椿が茶道に深く関係するのも当然かも知れませんね。
数寄屋の名前の由来
椿の数寄屋の名前は茶室の「数寄屋」からきていると思われます。「数寄」は「好き」からきていて、茶を好く好き者を「数寄」と書き換えたものだと思います。今でいう当て字でしょうか?数寄屋の発祥は安土桃山時代のようですが、江戸時代には数寄屋という言葉は茶室を表すほどに広まっていたようです。当時の数寄屋は華美を嫌い、在野の材料や技術を在り合わせて成立したと考えられていますが、現代では最高級の技術を用いて侘寂を表現するものになっています。
数寄屋(すきや)
椿の「数寄屋」は小ぶりな端正な花を多くつける可憐なツバキで、江戸時代にも好まれたことはよく理解できます。侘寂ではなく可憐という風情ですが、侘寂の数寄屋の中に飾るにはちょうど良い具合で茶人に愛されたのも想像されます。
ネットで検索すると数寄屋侘助とか数寄屋雲竜という種類が出てきますが、これはDNA鑑定に拠って、数寄屋という品種が侘助系であることが証明されたからです。また数寄屋雲竜の方は、枝の形状だけが違う種類でくねくね曲がっている方が数寄屋雲竜というそうです。この数寄屋も椿の中では早咲で炉開きの頃にお目見えします。花の特徴としては、花弁五枚の一重咲きで、色は写真のような薄桃色で白のぼかしが入った感じです。葉は細身の楕円形、雄ずい群(花びらの中の黄色い雄しべは短めです。)咲いた感じが猪口咲(ちょこざき)ですね。椿の咲き方は本当に沢山種類がありますので、また椿の説明記事を書きたいと思いますが、とりあえず数ある椿の見分け方として上記の特徴を覚えておくと、そのうち分かるようになると思います。(私の場合は忘れてしまうので肝心な時に名前が出てきませんが(笑))