無想庵コラムCOLUMN

薫風自南来  五月の掛け物

薫風自南来   五月の掛け物

薫風自南来

くんぷう みなみよりきたる

薫風自南来、殿閣生微涼 という対句になっている。 『東坡集(とうばしゅう)』という書物に書かれている禅語とのことですが、柳公権(りゅうこうけん)という文人と唐の文宗皇帝の詩の応酬?から来た句です。

(くんぷう みなみよりきたり、でんかく びりょうをしょうず)と読みます。

現代文的に訳すと「初夏に吹く爽やかな南風が、宮殿いっぱいに快適な涼しさを運んでくれる」という意味です。

どういう情景かというと、 春になって、南方からかぐわしい風が吹いてくると、楼閣の部屋と言う部屋が、さわやかな感じになる模様を表現していると思われます。

3番目の『自』を『より』と読むところがミソです。私も初めは、「おのずと」と読んでいて、薫風が自然と南から吹いてきた、という情景を思い描いていました。全くの間違った解釈ではないですが、そもそもこの句の由来から考えるとちょっと間違った解釈でした。

薫風と言うのは初夏の爽やかな風のことをいいますが、一説にはインドから中国に禅を伝えられた達磨大師に薫風を重ね合わせる解釈もあるようです。 初夏を迎えるこの時期によく茶席に掛かる一行書です。上記の由来と共にこの句がきちんと読み上げ出来ますと、よくご存じですね!と言われると思いますよ。

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