無想庵コラムCOLUMN

吟風一様松 九月の掛け物

吟風一様松 九月の掛け物

吟風一様松(かぜにぎんず いちようのまつ)

これは『寒山詩(かんざんし)』という漢書に出て来る句で、対句があります。

泣露千般草、吟風一樣松。(露に泣く千般の草、風に吟ず一様の松)

先に単語を説明すると、千般 とは あらゆる一様多くのものがみな同じである様子のことです。

「草々はしっとりと露に濡れ、松の梢も全て風に吹かれて笛の様に鳴っている」と いった訳になりますでしょうか?

芳賀幸四郎氏の『新版一行物』には、次のように解説されています。ちょっと難しいけど頑張って読んでみましょう。

「……もしこの二句から禅の宗旨を汲みとるとしたら、『山路には色とりどりの草花が生いしげり、秋露にしとどに濡れて千姿万態の相を呈している。しかもその側には大小・高低さまざまな松が、風に吹かれてサヤサヤと一様のメロディを奏でている。差別と平等とがこのように相即している、これが自然と人生の真相である』と、汲みとるべきであろう。(中略)平等の面だけをみて差別の面を忘れるのも、差別の面だけを強調して平等の面を無視するのも、どちらも偏った見方で真理に反する。平等とともに差別を見、差別の裏に平等を見ると、こうありたいものである」

夏の暑さのピークも過ぎ始める九月中旬頃に、ぴったりの軸と思い選びましたが、やはり禅語は奥が深くて小難しい…。九月限定の禅語という訳でもないので、もし茶席で見かけた際はさらりと読んでしまいましょう!草書でも読めないほどの漢字ではないですし。

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