無想庵コラムCOLUMN

唐錦 十月の銘

唐錦 十月の銘

字の通り、唐織りの錦のことです。中国から渡来した錦織は古来、今でいう超高級な舶来ブランド品でした。しかも高級というだけでなく、高貴なものでした。その紅色のまじる美しさから、紅葉にもたとえられています。またそこから、和歌では枕詞としてよく登場しています。

銘は茶杓や茶碗、茶入れなど道具に名付けられたそのものの固有名詞ですが、所有者の想いが多分に込められています。お稽古では練習として問答があり、銘を聞かれたら、相応しい銘を答えなければいけませんので、頭を捻る訳です。秋が本格化する十月は紅葉が色づき始め、山々が錦の様に美しくなって行くので、それになぞられて唐錦という銘が付けることが出来ます。濃茶席に出される主菓子にも唐錦という練り切りやきんとん製の色鮮やかな菓子が出されます。

ツバキ 唐錦

右の写真は椿ですが、唐錦という品種だそうです。色とりどりというわけではないですが、ピンクと白の絞りが入った大変綺麗な椿ですね。

唐錦という銘が付けられる茶碗は京焼のカラフルな絵柄を想像してしまいますが、萩焼で銘が「唐錦」という茶碗を発見しました。最高傑作とのことなので〇百万以上するかも知れませんが、萩焼なので地味なのになぜか銘が納得できる一品に感じたのでちょっと紹介したいと思います。私の所蔵ではございません。官休庵の書付がついているのだそう。

コメントを残す

記事に関するご質問やご意見などありましたら下記のフォームよりお気軽に投稿ください。