無想庵コラムCOLUMN

唐錦 十一月のお菓子

唐錦 十一月のお菓子

唐錦(からにしき)

こなしの茶巾絞りのお菓子です。菓銘の「唐錦」とは中国の絹織物の美しさが転じて紅葉の見事さを表した言葉です。

昔は絹織物は中国でしか生産できずその貴重性、色鮮やかさから名づけられた歴史有る菓銘です。 古今和歌集 にも唐錦は詠われています。

唐錦 秋の形見や立田川 散りあへぬ枝に 嵐吹くなり

唐錦という銘のお菓子は京都の末富さんのような有名店から、街の和菓子屋さんまで沢山の和菓子店から生菓子としてこの季節に作られています。唐錦というくらいですから、紅葉を意識して 赤・黄・緑の三色のこなしこし餡を包み茶巾で絞り錦のような紅葉の秋山の美しさを表現しています。

先ほどさらりと 「こなし」と言いましたが、こなしとは、餡(あん)に粉をそのまま入れて混ぜて、蒸し上げた生地を使った菓子のことです。 強力粉を混ぜるともっちりとした食感に、薄力粉を混ぜるとややあっさりとした食感に仕上がります。 粘土のような柔らかさに仕上がるため、はっきりとした造形に向きます。 ですので、生菓子でいろいろな意匠(造形)で作られている生菓子はこなしと言えます。その団子状のこなしを茶巾で包んでちょっと先を絞ると上のような感じに仕上がる訳です。

考えてみたら、練り物と言われる和菓子はほぼほぼ餡で出来ているんですね。餡が苦手な人は食べられないからお気の毒です。実際、お茶を何十年とお稽古されている人の中にも、練り切りやこなしなど練り物には手を付けない方もいらっしゃいます。茶席では要らないとも言えず、少しだけ食べて後は懐紙に包んで持って帰っていらっしゃるようですが、大寄せの茶会では個人個人に合わせてお菓子を用意できないので仕方ないですね。

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