無想庵コラムCOLUMN

茶道の三大重要道具② 茶入

茶道の三大重要道具② 茶入

茶入(ちゃいれ)

茶入とは、濃茶を入れて点前に用いる陶器で、牙蓋(げぶた)といって象牙で出来た蓋をします。牙蓋には( 下の写真の様に)傷の様に見える黒い線があります。これは「す」または「虫食い」と言って、象牙の「髄」だそうです。人間の歯で言えば、血管や神経が通っている所になります。調べによると1本の象牙の先1/3位の部分から髄は細くなって、先の部分は髄はないらしいので、この「す」が入っていることは貴重品ということになります。 ですので、濃茶点前では茶杓を茶入の蓋の上に置きますがルールがあります。炉と風炉の点前、和物と唐物の茶入の違いなどで扱いが違い混乱しますが、次のように覚えると明確になります。

左から仕覆、茶入、牙蓋、茶杓

 ①茶杓を茶入の上に乗せる時は茶杓を釜のある側に置きます。(「す」の有無に関係なく)
 ②「す」の上に茶杓を置くことはありません。 結果として、この「す」の向きも決まっていて、右側にするか左側にするかは写真のように、左側に茶杓を置かないといけないなら(風炉の濃茶点前の時)右側にセットします。

また名物裂などの生地で作った仕覆(しふく)という袋を着せて使います。仕覆の多くは名物裂や好み裂、由緒ある裂を用いることになっています。人間で言ったら洋服ですので、一つの茶入でいくつも仕覆が付いているものもあります。また古いものですとつがりや裂地が痛んで弱くなっている場合があるので、拝見する時もそういうつもりで扱う必要があります。粗雑に扱うと物の価値が分からない人とレッテルを張られることになるので普段から丁寧に大事に扱う意識が必要です。

茶入は、大きく分類すると、唐物(からもの)、和物(わもの)、島物(しまもの)の三つに分類されます。茶碗も同じ分類です。

  • 唐物…中国で作られたもの。特に宋や元の時代に作られた古く出来の良いものは漢作唐物と言って、特に高級品で名物になっている。まず本物の唐物は流通してないでしょう。
  • 和物…国内産のもの。瀬戸は歴史が古く窯元の数も多かったので別格扱いで一つのジャンルとみなされています。京焼、楽焼それ以外を総称して国焼と言います。
  • 島物…東南アジアで作られたもの。

茶入の形状は大変多く、100種以上あります。 よく出てくるのは数種類なので、それだけは形の名前を覚えてしまいましょう。茄子(なす)、肩衝(かたつき)、文琳(ぶんりん)、丸壺(まるつぼ)の四種を茶入四品と言います。尻膨(しりぶくら)、大海(たいかい)鶴首(つるくび)の7つを覚えれば大丈夫だと思います。(あとは相当茶入に詳しくないと見分けがつきにくいと思います。)

薄茶器(うすちゃき)

薄茶器(うすちゃき)とは、薄器(うすき)とも呼ばれ、薄茶を入れる容器の総称です。世間的には薄茶器=棗(なつめ)のイメージがありますが、棗は薄茶器の一種類でしかありません。この薄茶器は材質と形状、大きさで分類されます。


材質としては、木地漆器一閑張が多いですが、他に象牙、竹、籠地などもあります。
形状は、大きく分けて「中次(なかつぎ)形」と「棗(なつめ)形」と「頭切(ずぎり)形」に分けられます。右の写真の様にそれぞれの形の中にも 数種類あります。写真ではたまたますべて黒塗りでですが、棗の良さは何と言っても、美しい漆塗や日本の伝統技術である蒔絵がほどこされた薄茶器です。薄茶器は時代とともにさまざまな素材や絵付により、数多くのものが作り出されました。

お道具の問答でよく「お棗のお塗は?」という会話が聞かれますが、塗りの模様などに拠ってそれぞれ固有の名称がついています。

曙棗(あけぼのなつめ)という棗は裏千家十一代玄々斎宗匠がお好みになった朱塗りの香次形の棗を指します。全体が朱塗で甲(蓋)の上に黒絵でが描かれています。また胴部分には松と亀の絵付があり、お正月の初釜など、おめでたいお茶席よく用いられる有名な棗です。

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