無想庵コラムCOLUMN

唐衣 五月の銘

唐衣 五月の銘

唐衣(からぎぬ)

中国風(唐風)の衣服のことを言います。 袖が大きく、袖が大きく、丈も長いので(裾はくるぶしまであり)、日本の衣服のように褄前を重ねないで、上前、下前を深く合わせて着るようです。 これから転じて、めずらしく美しい衣服のことをいうこともあります。

右下⑦番が唐衣

万葉集にも出てきます。「唐衣 君にうち着せ 見まくほり 見まくほり 恋ひそ暮らしし 雨の降る日を 」 現代風に解釈すると唐衣をあなたに着せて、その姿を見たいと思いながら、恋いこがれて暮らしています、雨の降る日に。 といった感じでしょうか?

皆さんもご存じのさらに有名な和歌は 在原業平(ありわらのなりひら)が残した 「唐衣 着つつなれにし 妻しあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ」という和歌ではないでしょうか?
それぞれの句頭に「か・き・つ・ば・た」の五文字を折り込んだこの有名な和歌は、六歌仙の一人、在原業平(ありわらのなりひら)が都に残してきた妻をしのび、
杜若(かきつばた)が咲き匂う三河国八橋、現在の愛知県知立市八橋町の辺りで詠んだ歌といわれています。その故事以来、 杜若の名所 として名高く、 業平塚も近くにある 刈谷市井ヶ谷町には、国の天然記念物指定を受けた、日本最大規模の 杜若群生地 があります。私が育った町碧南市に割と近いです。

唐衣という銘は、主菓子のご銘にもよく登場します。右の写真はまさに唐衣らしい綺麗な主菓子ですね。素材はういろうです。

杜若の、唐衣(唐風の衣服)をも思わせる美しい姿と、「古今集」にも収められている、「伊勢物語」第九段のこの歌との、両方の意味を併せ持ったお菓子です。

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