無想庵コラムCOLUMN

若草 三月の銘

若草 三月の銘

若草(わかくさ)

季語としては、若草の季節は晩春で4月になるのですが、お茶の世界では三月に良く使われる銘です。「若草」という銘は春に新しく生えてきた草の若々しく柔らかなさを表現していますよね。実際、その年の気温にも拠りますが、三月も中旬くらいになると街の景色も随分春らしくなり、緑が増えて来ます。 「若草萌ゆる季節を迎え」と手紙の時候の挨拶にも相応しい時期が三月だと思います。

表紙の写真は、お隣の県、奈良県の若草山の春の風景です。 若草山と言えば、毎年1月に行われる「若草山焼き」が有名ですよね。早春の訪れを知らせる奈良の伝統行事であり、”炎の祭典”と名高い奈良の冬の風物詩ですが、暖かくなってくると若草も生え鹿たちがのんびり草を食んでいます。

お茶の世界では、茶杓や茶碗などに銘が付けられますが、左の写真は、若草の歌銘が付いている茶杓です。歌銘と言うのは和歌をそのまま銘にしているということで名前としては凄~く長いですよね?まるで落語の『寿限無』みたいですが、実際歌銘のついたお道具は時折見かけます。

歌銘は 『若草 わが身よにふるとしながら若草の 雪間の春に逢うぞうれしき 』小堀遠州流の小堀宗明という方のお作だそうです。

またお茶には欠かせない和菓子でもこの若草は、名付けられています。島根県松江市の彩雲堂他で作られている和菓子で、茶人としても名高い松江藩7代藩主松平治郷(不昧)によって考案されたもので、主に春の茶菓子として用いられたそうです。不昧の没後は製法が不明となっていたそうですが、明治時代中期に彩雲堂さんの初代によって復元されたそうです。 いわゆる「不昧公御好み」の茶菓子の一つです。

私自身食べたことがないので、ウィキペディアを参照してどんなお菓子なのかご紹介したいと思います。

写真の様に、餅に砂糖を加えて練り上げた求肥を長方形にして、その周りを緑色の寒梅粉(餅を粉砕した粉)を一面に塗した物です。不昧の歌「曇るぞよ 雨ふらぬうち 摘んでおけ 栂尾の山の 春の若草」から採り、若草と命名されたとのことです。

今では松江市の代表的なお土産になっていますよね。「山川」、「菜種の里」と合わせて不昧公三大銘菓と呼ばれているそうです。またいずれ三大銘菓や「若草」については取り上げたいと思います。

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