無想庵コラムCOLUMN

夕さり 九月の銘

夕さり 九月の銘

夕さりとは、夕方(になること)という意味です。 「さり」は来る、近づくの意味を表わす動詞「さる(去)」の連用形だそうです。語感的に夕方というよりは夕さりの方が趣がありますね。和歌でも登場している言葉です。

ゆふされば 螢よりけに もゆれども ひかりみねばや 人のつれなき  紀友則(古今和歌集)

お茶では、「夕去り(ゆうざり)の茶事」という茶事があります。 夕ざりの茶事とは夕方の明るいうち (五時くらい )から席入りをして、中立の頃に夕暮れを迎え、宵のうちに点茶を行う茶事です。 この茶事は、秋の夕暮れのはかない一時と秋の名月を愛でる茶事で 、 秋を迎えるにはぴったりの茶事だと思います。 季節は特定されていませんが、たそがれ時の「中立(なかだち)」までが正午の茶事、そして「後入り」からが夜咄の茶事のイメージでしょうか? お茶席では夜の花を嫌うため、夕去りの茶事では初座で花を入れます。(一般的な茶事だと初座は掛け軸)お花は出来ることなら夕方から咲く花 (夕顔、カラスウリなど) を選びます。 ということは初座が陽の席になるということですね。 他の茶事と違う部分です。

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