無想庵コラムCOLUMN

孤鶴一声破寒烟 十二月の掛け物

孤鶴一声破寒烟 十二月の掛け物

孤鶴一声 破寒烟 (こかくのいっせい かんえんをやぶる)

寒烟とは、さびしく立ちのぼる 寒々とした煙や靄(もや)のことです。冬の寒さ厳しい雪の広原で、鶴が一声甲高い鳴き声をあげる。そんな情景が思い浮かびます。その一声で辺りの靄や霧が吹き飛んでしまう、という情景を詠たっていると思います。誠に冬らしい句だと思いませんか?

ただ、禅語ですので情景を表しているだけでなく、精神的な学び、悟りを含んでいると思います。自然界での靄や霧は、禅の修行では、煩悩、妄想の類を指していると思います。鶴の一声、つまり師匠の一喝によって、グルグルと思い悩んでいる状態、煩悩や妄想から一転して悟りの境地に達する様を表しているのだと思います。

一声(いっせい)という言葉は、禅語ではよく使われる馴染みのある言葉なのです。動物や鳥の鳴き声、雷の鳴り響く音を表しているのですが、その中には、修行者が迷いから覚めて、悟りを得た瞬間に思わず発せられる一声という意味も含まれているようです。

禅語の掛け物は情景を表していると同時に人間の心の成長、悟りなど精神的な意味合いも込められているのが、難しくも奥深いところだと思います。(字も草書で読みにくいし…。)

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