無想庵コラムCOLUMN

武蔵鐙 五月の茶花

武蔵鐙 五月の茶花

武蔵鐙(むさしあぶみ)

今月取り上げる茶花は、武蔵鐙という花です。写真で見る通り、変な花ですよね?私もお茶席で見かけるまでは、名前はもちろん、存在すら知りませんでした。 名前の由来は、武蔵の国で作られたタイプの 「鐙(あぶみ)」に特によく似ていたためだそうです。

鐙(あぶみ)というのは、乗馬の用具の一つで、 馬に乗る者が足をかけて身体の安定を保つために、 鞍(くら)の両わきにさげて足を踏みかける(乗せる)ものです。〈あしふみ〉からきた名称とのことです。この鐙の形状タイプとしては 足を掛ける部分を輪につくった輪あぶみと,足先の覆いをつけた壺あぶみとがありますが、現在では輪状の方が圧倒的に多いと思います。 右の写真が昔、侍が使っていたであろう鐙で、タイプとしては壺鐙というものです。

さて武蔵鐙(むさしあぶみ)は、海岸近くの林中などに自生しています。特徴は大きな葉が2枚 (さらに小葉は3枚)あり、その間から鐙(あぶみ)のように丸まった形の 仏焔苞(ぶつえんほう)が 出ています(表紙写真のうす緑色で耳型のもので、 確かに鐙をひっくり返した様な形をしていますね。 )

ただ仏焔苞(ぶつえんほう) は花ではなく、実際の花はこの仏焔苞の中にあり、 普通は見えないのです。 花?( 仏焔苞)の時期は、今頃の4月から5月です。

ちょうど5月は初風炉と言って、炉から風炉に釜が変わる時期ですので、椿から夏の花に変わって行く象徴のように私は感じています。

中々手に入らないので、お写真は借用ですが、こんな感じで、床に荘ると映えると思います。写真では、唐金の花入を使ってらっしゃいますが、真塗の薄板を引き、経筒を花入れにしたら重厚感も出て、濃茶席でも似合いそうです。

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